2013年09月16日

15 愛してる







セクシー安.jpg
自分の人生を、
自分の気の弱さを、
誰かのせいにしたいくらい、
俺はとまどっていた―。







「わたしね―。」



保田は起きていた。

もしくは起こしてしまったのか、それはわからない。

まるで、何かの話の続きのように、保田は語り始めた。



ベッド保田3.1.jpg




「私ねー。結婚とか、もういいんだぁ」




俺は、もう、言い訳出来ないくらいの距離まで近づいていた。

保田は一度、目を合わせたが、すぐに空を見あげた。

何を―。

何を言い始めるんだ…?






「恋愛はしてるよ? でも、重たいのはイヤ」



「え…」



「一生懸命、頑張ったんだからァ。結婚生活。いろんな事にも耐えた」



「好きな人…いるの? っていうか、彼氏とか…」



「うん。いるよ」





よ、良かった…。

危うく、彼氏のいる人に、間違いを起こすとこ…

い、いや、良くない! か、彼氏…? そうか、もう、そんな…。 





「心」というものは、どこにあるのか。

おそらく、頭の中の脳なんだろうけど、

そのことを聞いた俺は、

背中から胃にかけて、ギュッと何かにつかまれるような圧迫を感じた。






「もう、耐えたり、縛られたり、約束したりなんかの恋愛はいいかな」





こいつ、なんだ?

読まれてた…? さっきまでの俺の考えていたことを…。

ああ、でも保田は昔からそうだったな。



「好きだ」って言いそうになると、

「私たち、男と女の親友だよね」って言われたり。

まるで、神様が仕組んだかのように、

俺と保田は付き合えないようになっているかのように。





また、黙るゥ…。なんか言ってよン(笑)」



「え…? い、いや、考えさせてよ。 あ、いや、思ったこと言うよ



「なに?」



「彼氏って…。じゃあ、今の彼氏は縛ったりとか…結婚とか…そういうのはナシ?」



「うん。でも、お互い必要としているし、愛してる」



「…しあわせなの?」



「うん! しあわせだよ!」







言葉が出てこない。

この現実。

まただ。また、一人になってしまう恐怖が襲う。

彼女が結婚するって言ったあの時と同じ…。





こんな気持ちになるなんて、そうか、俺は…。

俺は…たった一日で、保田への気持ちを甦らせていたのかもしれない。




でも、このまま黙ってると、また保田に心を読まれてしまう。






「だったらさ」





もう見切り発車だ。

読まれるくらいなら、言ってやる。

普段、思ったことを整理して飲み込み、

相手に合わせた行動ばかりとっている俺にとっては、冒険だった。






「だったらさ…! なんで、あんなこと言うんだよ」



「ん?なァに?」



「私たち、結婚しようかって…」



「え…! そんなコト、アタシ言ったァ〜ン?」



「そういうのさ、彼氏がいるのになんで言うの」



「ん〜。仮に言っても、冗談に決まってる…。テツヤならわかるでしょ〜?」



「俺と付き合えばヨカッタ、とかさ」



「だから…」



「好きでも愛してもいないくせにさ…ひどいじゃんか」



「だからァ〜。冗談…」



「気持ち悪いかもしれないけど、俺は冗談にとれないんだよ」



「ええ…」



「他の子なら…冗談だって、流せる…けど、お前だけは違うんだってば



「へ?」



「そんなこと言われると、嬉しいんだよ…お前に言われると」



「そ、そんな、テツヤ、怖いよ? 純情すぎ…」



「すごく嬉しいんだ…。だって…だってさ。お前の事、好きだったんだから…」



「なに…? え…?」






「ひどいよ! いっつもそうやってさ、残酷な冗談ばっか言ってさ…!」



ベッド保田0.1.jpg



「・・・・・。」






もうヤダ…。隠しててごめん。好きだったんだ、お前の事」



「・・・・・・。」



「知り合ったころから、ずっと愛してた。」












18年越しの、告白。





a-ha "and you tell me"

君を嫉妬させようと変な小細工をしたり、
君が離れないようにするために僕は一生懸命努力したんだ
一日は長くて、夜は狂いそうになる
自分がおかしくなるんだ 君がいなくなってから
だけど、君はこう言う
”愛してなんかいないくせに”

タイトルは、この曲から引用しました。
俺が保田に会いに行く途中、ウォークマンでよく聴いていた思い出の曲です。


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posted by みるしょう at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛してなんかいないくせに | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月15日

14 グッドエンディング/バッドエンディング










やすだあおい.jpg

保田が俺の部屋で待ってる。
今は、ともかく彼女と話がしたい。







保田を部屋で30分は待たせてしまった。

子供の頃は考えられなかったシチュエーション。

ともかく、彼女と色んな話がしたい

昔のこと、最近のこと、これからのこと…。




かるびのことは…。

もう、終わったんだ。終わった話。

俺だって、これからの自分の事を考えなくっちゃあな。




実家の階段を上がり、俺の部屋のドアをそっと開けた。

ドキドキしている。中学の頃の感覚に近い。





「保田…?」



やけに静かなので、自然と小さな声で呼びかけた。




「(うっわあ………)」

セクシーやす.jpg

俺は、凝視することが出来なくて、

思わず顔をそらした。

何度も言うように、保田は俺にとって天使だ。

アイドルとかスター、それ以上の存在。

もし、憧れの人が、自分の部屋に、自分のベッドに寝ていたら、

じっくり観察なんて出来ますか? 俺には無理…。





「やす…」




起こしちゃ悪いな、と思いつつも、

もし、うたた寝の程度だったら、ちょっと起きて欲しい気もする。

ちょっとずつ、顔をそらしながら、ベッドの方へ少しずつ近づいた。





「保田…? 寝てる…?」



返事はなかった。

ようやく、彼女の寝顔をまじまじと見る。

セクシー安.jpg

「きれいだな…」

人形のような、子供のような…。






さて…?

これから、俺はどうしたらいいんだ…?

正解は…?

いろいろ、意見はあるだろう。






”いろいろつらい目に合って、今日は楽しく遊べたんだ。そっとしておいてやれ”

そりゃそうだ。

ちょっと、自分に着いてきたからって調子に乗っちゃいけない。

保田はそんなつもりで来たわけじゃないんだ。





”寝てる隙に、キスぐらいしちゃいなよ…”

キスしたいわ。こんなきれいな顔が目の前にあるんだもの。




”起きたら起きたで、どうとでも言えるさ。
だって、彼女はここまでお前に着いてきたんだぜ?
お前に好意を持ってるんじゃないか?”


だめだ…。そんな都合よく考えられるものかよ。特に保田に限っては。




”もう、お前もいい大人だろう。彼女だってわかってくれるさ!”

そんな。









…でも。

世の中、お互い好きじゃなくたって抱き合う輩はたくさんいる。

でも…。なんかダメなんだ、そういうの。

性行することがピークじゃないんだ。

そのあとのことも、俺にとっては大事で…





目の前のきれいな保田の顔を、もう2分はみつめている。

だいぶ、この状況に、自分も慣れてきて、

今度は身体の方に目がいく。毛布はかかっていない。

指先、胸元、両脚…。

きれいすぎる。宝石のように…。

俺は、

保田の顔に、手を伸ばした。

額にかかった前髪をそっと触って、分けた。

そのまま、手の甲の部分を…彼女の頬にすべらせた。

理性が薄まっていく。

自分の中のルールをぶっ壊したくなる。





(このまま、強引でも…)




そうさ、

世の中、みんなそうなんだろ?

もう俺だって、中年の域に入ってるのに…いつまでプラトニックしてんだ。

一晩限りとか、セックスを楽しむ、とかよくある話じゃないか。





大体、

世の中、みんな、俺に比べたら、全員ちょいワルなんだよな!

普段、まともな事、言って、正しさを主張するくせにさあ…。

けっこう、自分勝手にやってるじゃん。

不倫とかもそうだし。

結婚したり、彼女がいるのに、風俗に通ったりさ。

下半身は別って。

言い訳にもなってないこと、平気で言う。

相手の事、彼女の気持ちとか、考えないのかなあ。






でも…

俺もそうなんなきゃダメ…か?

思えば、今までいろんなこと我慢してきた。

たった一度の人生…とか考えるとキリがないけれど。

かるびのことだって、そうだ…。

我慢して我慢して、

自分の気持ちを抑えてきて、結局、自分に何が残った?

保田だって言ってたじゃないか。

「話す前に考えてる」って。

思った通りのことを行動しろって言うんだろ?

だったら…。






今、俺は保田にキスしたい。

俺は保田を、今、好きなのか?

愛してるのか?

淡い初恋の思い出と、

単なる性欲。

スカートの中に手を入れたい。

それでいいの?

保田の気持ち、考えないの…? 
















「無理だー…!!」



そんなの無理。

今までの女の子とは、違うんだ、保田は…。

もう、女性じゃなくて、人間として…








ああ、

ダメだなあ、俺は。







ベッドのそばから少し離れようと、

立ち上がろうとした。




「!」




保田と目が合った―。








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posted by みるしょう at 17:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛してなんかいないくせに | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月21日

13 縛り










444.jpg


かるび―。

旦那との話し合いが終わり、

最後のお別れをした時だ。





「さよなら、元気で…。しあわせに。しあわせになって」



かるび
「…ありがとう。でも、うち…。どうしたらええんやろ…。わからんのやって…」




「ん? わからん?」



かるび
「旦那と一緒に…(職を)探せばええんかな…? それとも(見守って)黙ってた方がええ?」




「…ああ。そっか、なるほどな。俺も無職の時、あったからさ…そう考えると…」



かるび
「怖い…」




「え…?」



かるび
「…。」



(ああ、そうか。今、旦那が横で会話を聞いているから詳しくは言えないんだね)





旦那がこの後、職探しをするにあたって、

何もかもがスムースに行くとは思えない。


でも、誰だってそうだと思う。

かるびは、

この後、どんなことが起こるのか、

旦那がどういう行動を取るのか

想像すると怖いっていうことを言いたいんじゃないだろうか?

職がみつからなくて、また暴れる、とか。意見が合わなくて口論になる、とか。

…。









「そうだよな…。わかるよ、気持ちは。
とりあえず、最初は旦那と協力するかたちで、一緒に職を探してあげて。

旦那さん、かるびとの仲を修復したいっていうのもあるだろうから、
二人三脚で、優しく応援してあげて。無理させない程度に。

怒ったり、嫌味を言ったらダメやで。
優しすぎてもダメだけど…。

難しいな。
まあ…。

そうだな、もし、状況が変わったり、困ったことがあったら…。

最後の手段で。

本当に最後の手段ってことで…。

俺に連絡…くれる…かな。


俺が渡した携帯、まだバレてないやろ?

持ってて…。万が一の時のために




かるび
「う、うん。そ、それは…。助かる…けど。心強い…んやけど。」




「(かるび、話しにくそうだな。そろそろ、タイムリミットだよな)
あ、お金はいいから。家族の割引で、大した基本料じゃないからさ。
な?」



かるび
「いや、それはこっちで…頼むわ。うちも、それくらいなら大丈夫やから」




かるびは、一度言うと、かなり頑固だし、

電話が長引くと、また旦那の機嫌が損ねかねない。

俺は折れて、請求書をかるびの実家の方にまわすことにして、電話を切った。







明日、宮古に帰って※調べればわかるはず。

かるびに渡した携帯の料金が滞っていて、

それと連動して、メインである俺の携帯が止まった
としか思えない。









あれから、何か月経ったんだ…?

最初の頃は、

いつ、携帯に電話がかかってくるか、いつもドギマギしていた。

しかし、かかってくることはなかった。

かるび…、支払い忘れちゃってるのか?

まさか…。

あれから、旦那の方も特に進展がなく、お金に困ってるとか。

必要ないなら、解約しなきゃならないし…。

解約するにしても、一度は連絡したほうがいいだろうし…。

ああ〜、もう、こんな時に。困ったな〜。










(あの時…携帯を持っててって言ったのは…)





(本当に万が一のために…っていう理由だったのか?)





かるびとのつながりを…保っていたかったんじゃないのか?











保田。

保田が、俺の部屋で、待ってる。
posted by みるしょう at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛してなんかいないくせに | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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