2013年08月12日

12 スウィング










ようやく、俺の実家に着いた。

懐かしい我が家。

少し、昔よりも煤(すす)けてしまっているのが寂しい。

隣には、母親が建てた小さな薬局がある。

俺は小学2年の頃から、ここで販売やレジ打ちなどをしていた。




家に入ると、母親が出迎えてくれた。

久しぶりに帰ってきたというのに、いきなりの女の子付き。

母親も、さぞ驚いたことだろう。

結婚報告か、或いは、こんな風にいつも女の子と遊んでる、

なんて、思われちゃいないかと、内心ヒヤヒヤした(笑)




しかし、さすが、保田。

挨拶も丁寧で、事情やお詫びなども含めてしっかりと挨拶してくれた。

(本当に俺たち、大人になってしまったんだなあ…。)

つい、彼女を中学生の頃の目線で見てしまいがちだが、

花も嵐も乗り越えた大人の女性の貫禄が見える。





母親は、歓迎してくれた。

いや、もともと、そんなにうるさい母親じゃなかったな(笑) そういえば。





大学の頃、

当時、つきあっていた彼女を、こんな風に実家に連れてきた
時も、

(厳密に言うと、俺の帰省に彼女が勝手についてきてしまった)

こっそり俺に二万円も渡してくれて、

「これで、二人でどっかに泊まって来い」と、男気のあるようなことを言ってくれたっけ。











あっ…



ふと、思い出す。

その大学時代の彼女が、ここへ来た時も、

今日と同じように、

俺はわざわざ電車に乗り、

地元の駅から歩いて、家に帰ったんだ…。



保田のことを思いながら。

保田と過ごした街をながめたくて…







大学時代の彼女は、ハアハア言いながら、歩いてついてくる。

「疲れたろ?だから言ったじゃんか、歩くからって。ついてくるなって」

「んーん。てっちゃんの住んでた街が見たかったの」

汗をかいた顔で、ニコリと笑った。

そんな彼女の気持ちも、ろくに考えず…。



(…保田に会いたいな…)



って、思ってた。

保田が結婚して、数年経っていたというのに…。

あの頃の自分をぶっとばしてやりたい…


ゆきちゃん.jpg


いくら若かった、とはいえ、俺も人のことは言えないんだ…。

かるびの旦那と同罪だ。

その後、何人かの女性とお付き合いしたけれど、

自分を慕ってくれた女の子を、こんな感じで寂しがらせたりしていたかもしれない。






保田に「好き」と言わなかった後悔、未練が、

他の女性と付き合っても、いつも、いつも、つきまとっていた。




だから、

最近、やっと。やっと、やっと、やっと、忘れたんだろ?

もう、大丈夫だと思ったから、保田に電話したんだろ? 俺?

思い出しちゃだめだ…。絶対に。

今、また保田のことを気になり始めたら…

俺は、今後の恋愛が出来なくなってしまう。





この時の俺は、異常なほどに、保田に対する思いを抑えていた。











保田を連れて、玄関から居間へ案内する。




保田は玄関までは来たことが何度かあるが、

ちゃんと家に入れたのは初めて。

当時、「入りなよ」って言っても、彼女、絶対に入らなかったもんな(笑)






保田
「あ、なんか、憶えてるゥ〜、テツヤん家。確か、アタシが誕生日の時〜!」




「そうそう。俺ん家(の玄関)、来たよな。俺とイサオが変な恰好をして」



保田
「ア・レ・! 超、驚いたんだからァ。二人でバカな恰好してさあ」




「うっそ、お前、苦笑いしてたじゃんか。へへ…って顔してさ(笑)」



保田
アラ、そうだったァン?(笑) 忘れたあ! あはははは」






居間には、俺の兄貴がいた。

兄は10以上、年齢が離れているし、性格は、全く俺と正反対。

一見、気難しく、近寄りがたい雰囲気を持っている(根は明るくて優しい)。

そこへ、サラッとそつなく挨拶をし、世間話にまで持っていく、保田。

自信に満ちた話し方。満面の笑顔。

これでも、サービス業の鬼と(言われてない)言われた俺が見ても、

100点満点の応対だった。


普段、あまり口を開かない兄も開かざる得なくなっている。

と、いうか、

保田は、仕事で、こんな風に接客してるんだなあと思って見ていた。

(こりゃ、オッサンから人気があるのもわかる)

アニキも、惚れたんじゃないかな…(笑)

性格は反対だけど、好みはおんなじだもんな(笑)











とりあえず、保田は、俺の部屋に待機してもらって、

少し、母親と話す。

「あんた、何回か連絡したけど、つながらなかったわよ

と、怒られた。





そうだ、携帯のこと。

なぜか、つながらなくなっている。

家の電話から、自分の携帯にかけた。

「現在、お客様のご都合により…」

やはり、これは料金未払いのための、一時停止だ。

おかしい…。引き落としになっているはずなのに。残高だってあるはず…。





俺が今、契約している携帯電話は、3台。




俺のだろ…

母親の…









あ! あ!!






わかった!


かるびだ!!


かるびに携帯電話を渡していた!!





a-ha "and you tell me"

君を嫉妬させようと変な小細工をしたり、
君が離れないようにするために僕は一生懸命努力したんだ
一日は長くて、夜は狂いそうになる
自分がおかしくなるんだ 君がいなくなってから
だけど、君はこう言う
”愛してなんかいないくせに”

タイトルは、この曲から引用しました。
当時、ウォークマンでよく聴いていた思い出の曲です。


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posted by みるしょう at 20:35| Comment(1) | TrackBack(0) | 愛してなんかいないくせに | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Posted by マッキー at 2013年08月12日 23:23
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